日本初の洋上風力基礎部品工場
プロジェクトを完遂せよ!

2020年、日本政府は3,000万~4,500万kwの洋上風力発電導入を2040年までに実現することを打ち出しました。しかしその時点で、国内には洋上風力発電に関するサプライチェーンは存在していません。私たちがどんなビジネスで貢献できるのか。この分野で先行する欧州に情報を求め、さまざまな企業とミーティングを繰り返すことから「未知への挑戦」が始まりました。

chapter01

次々と降りかかる
想定外の困難に立ち向かう

2021年、日本初の洋上風力部品工場の製造設備を一手に引き受ける大型プロジェクトの商談が始まりました。当時日本では、まだ洋上風力発電産業が確立しておらず、私たちは欧州にその情報を求めました。しかし折悪しくコロナ禍の真っただ中。オンラインで10社以上ものメーカーとミーティングを繰り返し、あるフィンランド企業をパートナーに選び出すと、受注前にも関わらず社員の現地駐在を決断しました。「たとえビジネスに結びつかなくても、欧州の最新技術をいち早く日本に紹介する意味はある」。機械提供以外の付加価値を意識したビジネスへの挑戦でした。
しかし、駐在員派遣を前に新たな困難が。渡航直前に勃発したロシア・ウクライナ戦争の影響で、急遽十数時間もかけてアメリカ回りでフィンランドへ向かわなければなりません。今後の行く末が決して楽観できないことを再認識させる幕開けとなりました。
翌年には、先行して進めた情報収集に対する評価もあり無事に案件を受注。その後も納期管理や詳細設計の調整、ロジスティクス指示、出荷前検査などのために、4名の社員が2~3ヶ月のローテーションで約1年半にわたってフィンランドに駐在しました。日本側でもお客さまとの設備仕様、契約調整、銀行交渉、保険、港湾作業の調整など、社内の管理部門とプロジェクトチームを編成して取り組みました。
機械の輸入は20船以上での分割出荷となり、その調整もまた困難を極めました。最初の船出しは2023年5月。コロナ禍もようやく沈静化の兆しを見せたことにより、今度はコンテナ不足や海上輸送費の高騰に見舞われます。さらに12月には商業船への攻撃が相次いだことからスエズ運河の運航が困難となり、喜望峰回りのルートへの迂回を余儀なくされました。納期遅延リスクと格闘しながら、最適な船社・航路を検討する日々が続きました。

社員
chapter02

同じ思いを皆で共有して
意思疎通を深める

船便を受け入れる神戸港にも社員を駐在させる必要がありました。神戸港で、全てのコンテナから荷を取り出し、トレーラーに乗せ換えて工場へ搬入するためです。トレーラーの総数はのべ400台以上にものぼり、毎日のように陸送が繰り返されました。
このプロジェクトは設備の製作から、輸送、据付、試運転までを一貫して請け負う契約。工場にも8名の社員を駐在させ、対応にあたりました。フィンランドのメーカーからも最大15名のSVが来日したため、通常の管理業務以外に彼らへのサポート業務も加わりました。
こうした海外メーカーを起用した大型プロジェクトでは、それぞれの利害や立場、国際間の文化の違いなどで予想していないことが生じてしまうことがあります。「日本初の洋上風力基礎部品工場を皆の力で成功させる」という思いを皆で共有し、関係者が集ってバーベキュー大会を催すなど、仕事以外での時間も共に過ごしながら、次第に意思の疎通を深めていきました。
また、現場のコミュニケーションは、海外のSVも多いことから全て英語で行われました。中には英会話が苦手な社員もいましたが、プロジェクト後半には、全員が自然に会話できるほどに上達していました。

※ SV=スーパーバイザー:設備の据付や試運転の際にメーカーから派遣される指導員

社員
chapter03

当プロジェクトの実績を基に
新たなビジネスへの挑戦を

今回のプロジェクトは、お客さまの工場設備を一手に引き受ける大型案件。私たちが果たす役割も大きく、責任もまた重大です。設備の設置が終わっても、オペレーターのトレーニングやアフターサービスなど、提供すべきメニューは多様にあり、今後も長期にわたって携わっていくことになります。“日本初”という、お客さまにとってもチャレンジングなプロジェクトであり、その成功の一翼を担っているという自覚を持ちながら、社員は日々現場で奮闘し続けています。
これまで中心としてきた「設備の供給」というビジネスから一歩踏み出し、お客さまに寄り添ってプロジェクトの立ち上げを経験したことは、私たちにとっても非常に貴重な財産となりました。
さまざまな分野でビジネスの再構築が進む今、私たちも「商社」の役割を再定義し、このプロジェクトの実績を活かして、新たな付加価値を生み出すビジネスへ挑戦していこうと強く思っています。

当プロジェクトの実績を基に新たなビジネスへの挑戦を